読書記録99

穢れしものに祝福を (角川文庫)

穢れしものに祝福を (角川文庫)

“ボストンの鬼才”デニス・レヘインによる、<探偵パトリック&アンジー>シリーズの
第3弾。惜しくも受賞は逃したが、PWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)が主催する
シェイマス賞の’98年度最優秀長編賞ノミネート作である。
前作『闇よ、我が手を取りたまえ』で、心と体に深刻なダメージを受けたパトリックと
アンジーは、数ヶ月探偵事務所を閉じていた。そんなある日ふたりは何者かに誘拐
される。それは大富豪トレヴァー・ストーンの手による者たちで、ふたりは、カージャックにあって妻を失い、自らも大怪我を負い、さらに癌で余命いくばくもないというトレヴァーに無理やり失踪したひとり娘デジレー捜しを依頼される。実はトレヴァーは、ふたりの前に大手探偵事務所の敏腕探偵ジェイ・ベッカーにも同様の依頼をしていた。しかも
そのジェイまでも行方不明になっていたのだ。パトリックにとってジェイは、かつて
探偵術を教えてもらった、いわば師であり友人でもあった。
トレヴァーの「絶望」に自分たちの身の上を投影したふたりは、デジレーとジェイの行方を捜すことに・・・。怪しげなセラピー集団と新興宗教団体の調査を経て、ふたりは
数少ない手がかりを追ってフロリダ州タンパへ向かう。
捜索は当然一筋縄でゆくものではなく、このあと二転三転する真相、積み重なる過去と現在の複数の死人を踏み越えて、「本当の悪・闇」は何かに行き着いた時、ふたりが取った解決策・ケリのつけかたは・・・。
本書は、パトリックとアンジーのふたりの、友情と恋の間で揺れ動く微妙な関係が
新たな段階にのぼる新展開をサイドストーリーに、ひねりを加え次々に浮かび上がる真相というプロットの妙が生きる、ハードボイルドの佳作である。