今日読み終えた本

多くのミステリーファン(一ファンから本当にミステリー作家になった方々も含めて)がそうであるように、私がミステリーの世界に入ったきっかけはエラリイ・クイーンの翻訳ミステリーだった。
それまでホームズやルパンや怪人二十面相などを学校の図書室などで少年少女向きのジュブナイルで読んでいた私は、小学5年生の冬休み、初めて一般の創元推理文庫でエラリイ・クイーンの国名シリーズのひとつ『アメリカ銃の謎』を読み、「世の中にこんな面白いジャンルの小説があるのか」とミステリー(当時は推理小説と呼ばれていた)に魅了されてしまった。以来大学までのうちに彼の著作はすべて読んでしまい、かつヴァン・ダインアガサ・クリスティーなど欧米の翻訳ミステリーを耽読して、ますます本格謎解きパズラーの世界にはまり込んでいった。
クイーンこそパズラー中のパズラー。アメリカミステリー界の巨匠である。
本書は何十年ぶりかで完訳されたクイーンの三部構成・41の掌編からなる犯罪実話集。
現実の犯罪を素材として、あるときはパズラー仕立てに、あるときは犯罪心理小説仕立てに、あるときは<奇妙な味>仕立てに、またあるときはオチのあるショート・ショート仕立てにアレンジされている。
創作ミステリーではないものの随所にクイーンらしさがうかがえて、クイーンのファンとしては、久しぶりにそのテイストを味わうことができた。