今日読み終えた本

風の影  上 (集英社文庫)

風の影 上 (集英社文庫)

風の影  下 (集英社文庫)

風の影 下 (集英社文庫)

17言語、37カ国で翻訳出版され、500万部を突破したという世界的なベストセラーとあって、早速読んでみた。
文庫にして上・下巻あわせて831ページにも及ぶ、読み応えのある大作である。
時は1945年。舞台は内戦の傷跡が残るスペインのバルセロナ。少年ダニエルは
「忘れられた本の墓場」で手にした小説『風の影』にたちまち魅了される。やがて彼は作者のフリアン・カラックスの謎めいた生涯に興味を抱き、取り憑かれたようにフリアンの過去の探求を始める。
「呪われた本たち、それを執筆した男、その本を燃やすために小説のページから抜けだした人物、裏切りや、失われた友情の物語だ。風の影のなかに生きる愛と、憎しみと、夢の物語なんだよ。」
真実を探るうちに浮かび上がってくるのは、登場人物ひとりひとりが背負っている悲哀に満ちた過去。純愛、憎悪、情欲、嫉妬、呪われた血脈・・・。そしていつしかカラックスの悲劇的な過去が、ダニエル自身がたどっている不思議な歳月・運命と微妙に
シンクロしてくる。
本書は、歴史、恋愛、冒険、青春、ホラー、ミステリー、サスペンス、ゴシックロマンと、いろんな要素が盛り込まれた、壮大なイリュージョンである。
私のような“小説好き”にとっては十分楽しめる、重厚な迷宮のような作品だった。