今日読み終えた本

荒ぶる血 (文春文庫)

荒ぶる血 (文春文庫)

’06年、「このミステリーがすごい!」海外編第2位、「週刊文春ミステリーベスト10」
海外部門第10位にランクインした作品。ジェイムズ・カルロス・ブレイクは、その独特な小説世界で’05年も『無頼の掟』で「このミス」3位になっているが、本書はそれを
凌ぐ、活劇エンターテインメントである。
時は1936年、ところはテキサス州南部、メキシコ湾に面したガルヴェストン、主人公は‘おれ’、ジミー・ヤングブラッド、歳は20代前半。彼は町を仕切る大物ギャング、
マセオ兄弟の下で、二人の仲間と共に殺し屋稼業を務めていた。ある日、ひと仕事
終えて帰ったジミーは、街角でT型フォードに乗った美しい娘を見初める。彼は隣人の親戚関係というその娘、ダニエラにのめり込んでいく。実は彼女はメキシコの大農場主、ドン・セサールのもとから逃げ出してきたのだった。セサールは冷酷非情な追っ手を放っていた。かくしてジミーたちにとって苛酷な、しかし避けられない活劇が繰り広げられる。
物語の前半は、ジミーの出自の数奇な秘密に始まり、その仲間たちにまつわる無数のエピソードが散りばめられている。中盤以降動き出す物語は、それこそ暴力小説、
活劇小説、犯罪小説、西部劇、任侠の世界、青春小説、ノワールの要素が渾然一体となって勇壮に展開する。
ともあれ、本書で読者は、ジャンル分けが不可能な、血が沸き立ち、心がしびれる、
まさにジェイムズ・カルロス・ブレイクの世界を堪能するのである。