今日読み終えた本

Rのつく月には気をつけよう

Rのつく月には気をつけよう

’05年から’07年にかけて『小説NON』に掲載された7編からなる、おいしい酒と肴、そして恋にまつわるミステリー連作短編集である。
生ガキにはスコットランドアイラ島シングルモルトウイスキーチーズフォンデュにはオレゴンの白ワイン、豚の角煮には沖縄の泡盛と、各ストーリーに登場するとびきりの旬の料理と酒の組み合わせはまさに垂涎モノ。
メインの登場人物は、大学時代からの飲み仲間である湯浅夏美、長江高明、熊井渚の3人。いつもの仲間が長江のワンルームマンションにワイワイ集えば、気の置けない美食パーティーの始まりだ。また、毎回誰かが連れてくるゲストは、飲み会のアクセントになって、酔いもまわり口が軽くなったところで謎が披露され、さらに恋愛話も盛り上がっていくのである。
真相への伏線の連続に読者が一瞬たりも気が抜けないのは他の石持作品と同じだが、本書はちょっと趣が違って、謎解き役の長江の最後の話まであくまで会話の中で無駄なく進む。良い結果ばかりではないが、それでもなんかこうココロがじんわりとする。
『月の扉』や『扉は閉ざされたまま』などで有名な、本格ミステリーの俊英、石持浅海がこんな軽妙で洒脱な作品を書くとはオドロキだ。
本の造りや装丁画も綺麗でなかなかオシャレである。