今日読み終えた本

TOKYO YEAR ZERO

TOKYO YEAR ZERO

’07年、「このミステリーがすごい!」海外編第3位、「週刊文春ミステリーベスト10」
海外部門第5位にランクインした、日英米同時刊行の話題作。
1945年8月15日、警視庁捜査一課の三波警部補は殺人事件の報せを受ける。時はまさに敗戦で、天皇陛下玉音放送が流れようとしていた。憲兵隊の管轄でもあり、容疑者と決めつけられた朝鮮人が三波の目の前で処刑される。しかしそれは事件の解決ではなかった。
翌年、あらたに2体の死体が発見され、犯行の手口から同一犯の疑いが濃厚になる。三波たちの地を這うような捜査が続くが、1体の身元はようとして判明しなかった。
やがて三波の周囲に暗雲が渦巻きはじめる・・・。
闇市を取り仕切るヤクザ組織の暗躍と、彼らとアジア系外国人との抗争、日本政府とGHQが繰り広げるパワーゲーム、焼け跡に潜む連続婦女強姦殺人鬼、敗戦直後の東京を舞台に、デイヴィッド・ピースの独特な文体で、異様な小説世界が描かれてゆく。ともあれ、イギリス文学の新鋭として評価されるピースが描く占領下の東京の姿は圧巻、ミステリと文学の垣根を蹴破り、占領と日本現代史という問題に見事に切り込んでいる。
そして、このノワールと称される暗黒小説には驚くべき叙述トリックが、見事な伏線と
ともに仕掛けられていた・・・。
本書はこのあと「帝銀事件」、「下山事件」と続く三部作の第1作とのことだが、三波の運命も含めて、どのように物語が完結してゆくのか目が離せない。