読書記録66

エヴァ・ライカーの記憶 (創元推理文庫)

エヴァ・ライカーの記憶 (創元推理文庫)

’79年、当時、国内・海外の区分けがなく、一緒にランキングを発表していた
第3回「週刊文春ミステリーベスト10」で第4位になった作品。
物語は1941年、真珠湾攻撃直前のハワイで起こったアメリカ人観光客夫妻の
殺人事件から幕を開ける。あまりの惨劇にホノルル警察の巡査ノーマンは職を辞することになる。そして1962年、いまや人気作家となった彼の元に、ある富豪から
タイタニック号引揚事業に関するルポ執筆の依頼が来る。21年前の事件の被害者がタイタニック号の生存者だったことから因縁を感じたノーマンはこの申し出を受ける。
第1部の<事件−ザ・ピースズ>は文字通り世界各国を飛び回り、取材するノーマンが描かれる。しかし、新たな殺人事件が起きたり、自らも命の危険にさらされたりする。すべての謎を解く鍵は、富豪の娘でタイタニックからの生還者、1912年当時10才
だったエヴァの“失われた記憶”の中にある・・・。
第2部の<解明−ザ・パズル>でノーマンは関係者一同を集めて、これら時空を
超えた謎を解き明かしてゆく。なんとこれが200ページを超えるボリュームなので
ある。そして文字通りすべてのパズルがはめ込まれた時、壮大などんでん返しと
犯罪計画が浮かび上がり、驚愕の真相が明かされる。
とにかく質・量共に圧倒的な謎また謎の連続、かつ第1部が暗号解読の趣向も
含めた、スリルに満ちた冒険小説であるとすれば、第2部は本格謎解き小説と
パニック小説である。
本書はまさに‘巻措く能わず’のページ・ターナーであり、
全編にわたってサスペンスフルなエンターテインメントのフルコースである。