読書記録34

エコー・パーク(上) (講談社文庫)

エコー・パーク(上) (講談社文庫)

エコー・パーク(下) (講談社文庫)

エコー・パーク(下) (講談社文庫)

“当代最高のハードボイルド”“現代ハードボイルドの到達点”といわれるマイクル
・コナリーの<ハリー・ボッシュ>シリーズ第12弾。
’06年度、ロサンジェルス・タイムズ・ブック・プライズ(ミステリー/スリラー部門)
受賞作である。
LAのエコー・パーク付近で深夜、女性のバラバラ死体を車に乗せていた男が逮捕
された。男は死刑から終身刑への減刑を条件に、過去に犯したロス暴動時の質店
主人殺しをはじめとする9件の殺人を自供するという司法取引を申し出た。そのなかには、ボッシュが扱った13年前の若い女性の失踪事件も含まれていた。ボッシュ
長年目星をつけて追い求めてきた別の容疑者は無実だったのか。さらに当時の調書の中に見落としていた記載が見つかり、ボッシュの苦悩は増す。
逮捕された男は、くだんの殺人で女性を埋めた場所の現場検証時に刑事と保安官補を撃ち殺して逃亡し、ボッシュのパートナーのライダー刑事も重傷を負う。大変な失態に自宅待機を命じられたボッシュは、コナリー作品では『ザ・ポエット』からシリーズで
再三登場するFBI捜査官のレイチェルの協力をあおぎながら独自に動き出すが、事件は思わぬ展開をみせる。
検事局長選挙に絡む政治的腐敗か、引退する未解決事件班のボッシュの上司の不審な行動の裏は、老石油王は、初めの容疑者である息子の不祥事にカネにものを
言わせて蓋をしようとしたのか。ボッシュの推理は、苦悶のうちに二転三転し、はじめは単純に思われた事件の裏に隠されたからくりの真相にたどりつき、遂に悲劇的な
結末を迎える。
本書は、コナリーの手による、次から次に湧き起こる事件とはがされる何枚ものベールが巧緻を極め、圧倒的なページ・ターナーであると共に、<ハリー・ボッシュ>シリーズ屈指の傑作である。