読書記録107

なぎなた (倉知淳作品集)

なぎなた (倉知淳作品集)

今やシリーズキャラクター<猫丸先輩>を擁して、“日常の謎”派を代表する
本格パズラー、倉知淳
本書は、’94年の本格的作家デビュー以来16年の間に書かれた彼の単行本未収録作品を集めた、ファン垂涎・必携の短編集。姉妹編『こめぐら』と2冊同時刊行。
本書『なぎなた』は、’96年から’09年の間に各雑誌に掲載された7編からなって
いる。
「運命の銀輪」(’09年):完全犯罪を目論んだ男の、倉知淳にしては珍しい倒叙もの。刑事コロンボ古畑任三郎を彷彿させる個性的な警部が登場して、僅かなほころび
から犯行を見破る。
「見られていたもの」(’97年):‘わたし’と‘私’の使い分けで見事に騙される叙述
ミステリー。結末がちょっと気持ち悪いのは、やりすぎ。
「眠り猫、眠れ」(’97年):年老いた‘あたし’の飼い猫とだいぶ前に離婚した親父の死(殺されたらしい)をダブらせたお話。
「ナイフの三」(’96年):コンビニ前にたむろする4人組が、「指切り誘拐殺人事件」の犯人を見つけた?
「猫と死の街」(’07年):詩織の迷い猫を「殺した」というおっさんと「暴行障害致死
事件」との関係は・・・。
「闇ニ笑フ」(’01年):最後の一行の衝撃(フィニッシング・ストローク)の逸品。ラストの一文で不可解な謎が全部氷解する。
「幻の銃弾」(’08年):ニューヨークを舞台にした本格パズラー。銃で射殺されたはずの死体からは銃痕は見つからず、死因は内臓破裂、圧死だった。
本書は、ちょっと長めの「あとがき」を含め、いずれも、人を喰ったようにコミカルで、
それでいて一応謎が(一部の作品では完全ではないが)解ける、“倉知ワールド”が
存分に楽しめる作品集である。