今日読み終えた本

ビッグブラザーを撃て! (光文社文庫)

ビッグブラザーを撃て! (光文社文庫)

8月26日付の当ブログで、「笹本稜平は’01年『時の渚』で「第18回サントリーミステリー大賞」の大賞と読者賞をダブル受賞してデビューした。」と書いたが、実はその前に、阿由葉稜(あゆばりょう)というペンネームで’00年『暗号ーBACK・DOOR』という作品を書いていたのである。それが’03年、文庫化に際して、笹本稜平名義で、さらにタイトルも改題された本書なのである。
本書は現在の著者の作風を予感させる国際謀略小説である。
ビッグブラザー”はコンピューターネットワークを使って世界の人口を1億人に減らして、「平和で、安定した」独裁世界を創ろうというとんでもない組織である。物語は、ある暗号ソフト<クロノス>の開発をめぐって、日本の公安警察アメリカの政府機関やロシアのスパイもからんでくる壮大なものであるが、いかんせん立ち向かうのが会社を解雇された一介のプログラマーという設定のため、彼を巡るホームドラマめいた場面も散見され、謀略そのものの恐ろしさが絵空事のように浮いてしまい、いまひとつ緊迫感というか、リアリティに欠けた感じがした。
しかし以降の作品ではその点も解消され、今や彼は「国際謀略・冒険小説」の代表的作家である。
全く余談だが、8月は読書が進み、図書館や新古書店もかなり利用したものの、書店で購入するケースも多く、経済的にも少し負担がかかった。“Amazonギフト券欲しい!”と、声を大にして言いたいところだ。