今日読み終えた本

なかよし小鳩組

なかよし小鳩組

つづいて荻原浩のデビュー第2作にして、再び「ユニバーサル広告社」の面々が活躍する、『オロロ畑でつかまえて』の続編である。今回も社長の石井をはじめ、コピーライターの杉山、アートディレクターの村崎、アルバイトの猪熊や知り合いのデザイナーらが登場するが、中心に据えられるのは杉山である。
いまだに倒産寸前の零細プロダクション「ユニバーサル広告社」に大仕事が舞いこんだ。ところが、その中身は幼稚園のクラスのような名前ながら、ヤクザ「小鳩組」のイメージアップ戦略、というとんでもない代物。
担当するハメになった、本書での主人公、アル中でバツイチの杉山のもとには、さらに離婚した妻が連れて行った小学2年の愛娘・早苗まで転がりこんでくる。家庭問題をも抱えながら、杉山の会社、仕事に対しての、そして愛娘・早苗に対しての涙ぐましい奮闘ぶりが、たっぷり笑わせ、そしてしみじみ泣かせてくれる。
これまでに『明日の記憶』(このブログの8月21日付「読書記録」で初めて出会った)をきっかけに荻原浩の諸作品を5冊読んできたが、どの作品でも何かに「奮闘する」主人公が登場して、笑わせながらもほろっとさせてくれる。ユーモア小説でありながら人情小説。そんなところが彼の人気の秘密なのだろう。