今日読み終えた本

サウスポー・キラー

サウスポー・キラー

昨年度「第3回『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を分け合った2作のうちの一作。
私も好きなプロ野球界を舞台にしたミステリーだ。
人気在京球団オリオールズの左腕投手・沢村航(わたる)が、見知らぬ男に暴行を受けたことが事件の始まりだった。沢村を「暴力団と癒着している」だの、「八百長を行っている」だのという誹謗中傷の告発文が球団やマスコミに送りつけられる。結局謹慎処分を受けてしまった彼は、自分を罠にハメた者に対して自ら真相究明に乗り出す。
そして彼は過去にもオリオールズの左腕投手(サウスポー)ばかりが同様の手口でハメられ、トレードに出されたり、選手生命を奪われていたという事実にたどり着く。誰が、何のために?
作者の言葉にあるように「密室などのトリックのない、死体すらない」、本来はサスペンス主体のストーリーなのだろうが、どう見ても球団はジャイアンツを、監督は長島さんをモデルにしたとしか思えない設定で、オーナー、フロント、コーチやトレーナー、チームメイト、他球団の選手、それに加えてスポーツ記者とのやりとりが業界裏話の暴露というより、むしろ私には漫画チックに感じられて、やや物語全体の緊迫感を損ねているような気がした。
サスペンスミステリーとしては今ひとつだったが、事実かどうかは別にして球団の内幕を垣間見ることができたことと、主人公沢村の野球に賭ける執念、投手と打者の駆け引き、試合中の選手の実際の動きなど、プロ野球ファンの一人として興味深く読むことができた。