今日読み終えた本
- 作者: 深谷忠記
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/10/25
- メディア: 文庫
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文庫で546ページに及ぶ長い作品だったが、内容は、第1部『記憶』、第2部『証人』、第3部『事実』となっていて、人間の深層心理にせまる「心理ミステリー」と「法廷ミステリー」が合体し、それに本格パズラーの要素を組み込んだものだった。
物語は二つの事件が交差する。
ひとつは39年前の事件、包丁を持った母親が父親を刺し殺す現場を見た。それが当時8才だった作家・曽我の忘れられない記憶だった。
もうひとつは現在の事件、夫を毒殺したとして一審で懲役10年の有罪判決を受けたが、無実を主張し、控訴審を戦う女性と逆転無罪を狙う女性弁護士。曽我は収監中のその女性被告人から手紙を受け取り、弁護士に協力しながら事件解明にかかわってゆく。二転三転する事件の様相、そして…二つの事件の真実は---。
会話部分が少なくて、心理描写が多く、著者の気遣いかどうかわからないが解説・説明の繰り返しが多く、その部分が私にはサスペンスを盛り上げるというより、いささか冗長な感じがした。
しかしそれを差し引いても、息づまる法廷場面はスリリングで一気読み。
作家らしい曽我の奇抜な着想と本格パズラーっぽい意外な展開には脱帽。