今日読み終えた本

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

今年一冊目は戌年だからというわけでもないが、犬がタイトルの本を選んだ。
このミステリーがすごい!」で’05年国内編・同点第8位にランクインした作品である。
都会生活での思わぬつまずきから故郷へ帰った紺屋(こうや)長一郎25才は、ペットの犬探しを専門としたい調査会社を開くが、開業早々舞い込んできた依頼は、想定外の、失踪人の捜索と古文書の解読だった。
紺屋は押しかけ助手のハンペーこと半田平吉と分担して初仕事に乗り出す。
失踪人の捜索を担当する‘私’こと紺屋と、古文書解読の調査を担当する‘俺’ことハンペーの視点が章ごとに交互に交錯して、一人称で語られ続いてゆく。
いかにもテキトーそうなハンペーが、意外にマジメに仕事をこなす姿はユニークだし、紺屋がはじめは病み上がりで意気が上がらないが、失踪人に対して自分の姿を投影しながら、次第に真剣に捜索にのめりこんでゆく様子はなかなか読ませる。
著者はライトノベル系出身とのことだが、文章にもスピード感があり、登場人物たちのキャラクター造形も若々しくて好感が持て、テンポ良く読み進むことができる。
そして二人の調査はいつしか微妙にリンクしてくるのだが、本書の一番の見どころは、“追う者”と“追われる者”が一瞬にして反転する、鮮やかにして実に論理的な逆転劇であろう。
このプロセスをして本書は「このミス」第8位という評価を得たのだろうと思う。
それにしても彼らは、こんな調子でいつ、本来希望する「犬探し」ができるのだろう。ぜひ続編を読んでみたい。