今日読み終えた本

暗く聖なる夜(上) (講談社文庫)

暗く聖なる夜(上) (講談社文庫)

暗く聖なる夜(下) (講談社文庫)

暗く聖なる夜(下) (講談社文庫)

’05年の海外翻訳ミステリー部門で、「週刊文春ミステリーベスト10」では第1位に、「このミステリーがすごい!」では第2位となった作品。(因みに本作と1位、2位を争って、「このミス」第1位、「週刊文春」第2位となったのは、ジャック・リッチーの『クライム・マシン』--1月16日付・当日記の読書記録に感想を記している。)
クリントン米大統領も愛読する“現代最高峰のハードボイルド・シリーズ”とうたわれるハリー・ボッシュ・シリーズの第9作である。
物語はハリウッド警察署を早期退職したボッシュが4年前の現役時代に関係し、今では迷宮入りした殺人事件と現金強盗事件をあらためて独自に調べ、真相に迫るというものだ。
ロス市警やFBIから「手を引け」と警告されたり、妨害を受けるなか、彼は元刑事から手がかりを得て、映画プロデューサー、弁護士、保険調査官、元銀行員などに対して孤独な捜査を続ける。
私は、犯罪をその事象から「論理」的に解決してゆく「本格パズラー」のファンなので、ボッシュのように手がかりを探って地道に「足」で捜査し、ついに真犯人たちの方からボッシュの自宅に襲撃に来て派手なクライマックスを迎える、という展開には少しとまどいがあった。
またロス市警やFBIがボッシュの捜査に対してなぜ警告・妨害するのか、その理由がよく分からなかった。
それでも短い章立てで進むストーリーはスピード感・臨場感にあふれ、知らないうちにボッシュに感情移入しながら、どんどん読み進むことができた。
また何よりもボッシュ自身が冷酷非情な一匹狼ではなく、「ジャズを好み、別れた妻へ今なお愛情を抱く、孤高の詩人」という哀感すら漂う描かれ方をしているところが印象的だった。
本書は事件を通して、ボッシュという人物・人格を浮かび上がらせているところが高い評価を受ける所以なのだろうと思う。