今日読み終えた本

祖国とは国語 (新潮文庫)

祖国とは国語 (新潮文庫)

本書はふたつのエッセイ集とひとつの紀行文から成っている。
『国語教育絶対論』は’01から’03年に「文藝春秋」や「産経新聞」などに掲載されたものがまとめられている。社会の破綻を招いたのはアメリカ型の合理主義であり、国家の再生には国語教育、ひいては日本古来の「情緒の文化」が必須である。しかるにわが国の現状は・・・。という現在のベストセラー新書『国家の品格』の源になる著者の意見が熱く語られている。そこに垣間見えるのは「祖国愛」である。
そんなエッセイのひとつ『犯罪的な教科書』で著者は「教科書のつまらなさ」、「ゆとり教育の失敗」について述べているが、私はそれらに加えて、教える側の教師の問題---つまり教師の質の向上のための教員養成課程の改善と更なるレベルアップの必要性も痛切に感じた。
『いじわるにも程がある』は「朝日新聞」や他紙に’00年から’03年に掲載されたもので、おもに著者の身近な生活の中で感じたことがユーモアを交えて面白く書かれている。私は家庭生活の中で「発見」を大切にする著者の姿勢が印象深かった。
満州再訪記』は、著者が生誕の地を家族で約60年ぶりに訪れる紀行文である。終戦当時、ソ連軍の侵攻からの命がけの「日本引き揚げ」の思い出を中心に、当時の史実・国際情勢を交えて70ページほどにまとめられている。平和の尊さを改めてつよく感じた。