今日読み終えた本

無頼の掟 (文春文庫)

無頼の掟 (文春文庫)

このミステリーがすごい!」’05年海外編第3位にランクインした作品。
原題は「泥棒(無法者)たちの世界」。1920年代、禁酒法時代のルイジアナ州からテキサス州にかけてのアメリカ南部を舞台にした青春アウトローストーリーである。
まず冒頭の銀行強盗のシーンから一気に物語に引き込まれる。
強盗は失敗し、18才の‘おれ’ことソニーひとりが逮捕される。
M収容所での過酷な収監体験や、決死の脱出劇、そして再び叔父たちと合流して強盗稼業に手を染めるべく広いテキサス西部を目指す。
そんなストーリーの展開が‘おれ’の一人称でスピード感をもって語られ、くいくいと読み進んでしまう。
この物語は単なるアウトロー小説という範疇には収まらない。緊迫感あふれる犯罪小説(クライムノベル)、冒険的要素もふくんだロードノベル、爽快な悪漢小説(ピカレスクノベル)、そして危なっかしくも次第に成長してゆく‘おれ’のみずみずしい青春小説である。
またサイドストーリーとしては、息子をソニーに殺され、復讐の鬼となり彼をひたひたと追い詰める、冷血かつ凄腕の元保安官補ボーンズの影も忘れてはならない。
本書はいろんな要素を併せ持った、本文中に合言葉のようにしばしば出てくる「先のことはわからない」に象徴されるアメリカ“繁栄と狂乱の20年代”の一面を描いた実力作である。