今日読み終えた本

弥勒の掌 (本格ミステリ・マスターズ)

弥勒の掌 (本格ミステリ・マスターズ)

文藝春秋のミステリー叢書「本格ミステリ・マスターズ」レーベルの1冊。
本書は原書房発行の探偵小説研究会編「本格ミステリ・ベスト10」で’05年第3位、「このミステリーがすごい!」では’05年国内編第19位にランクインしている。
綾辻行人有栖川有栖らをはじめとする新本格第1世代作家の一人、我孫子武丸が自身の最高傑作といわれる『殺戮にいたる病』からなんと13年ぶりに書き下ろした実力作である。
ある日突然失踪した妻を捜し求めて、新興宗教団体≪救いの御手≫の存在を知った高校教師。妻を殺され復讐を誓いながらも、汚職の嫌疑をかけられ、本庁人事監察から内部取調べを受けるベテラン刑事。やがて二人の行動は≪救いの御手≫の本部で交わって、事件は思わぬ展開を見せる。
刑事の妻の殺害は、果たして≪救いの御手≫の手によるものか。そもそも彼らの正体は?
折原一の諸作品を彷彿とさせる、アンフェアーぎりぎりの巧みな叙述の目眩ましは、衝撃のサプライズに収束してゆく。よほど注意して読み進んでも、まずだまされること請け合いだ。
また昨今の分厚い大作ブームの中、265ページという量は、だまされながらも、“謎”を楽しんで一気に読みきるパズラーという点では手頃な長さだった。