今日読み終えた本

サルバドールの復活〈上〉 (創元推理文庫)

サルバドールの復活〈上〉 (創元推理文庫)

サルバドールの復活〈下〉 (創元推理文庫)

サルバドールの復活〈下〉 (創元推理文庫)

本書は、ミステリチャンネルの「闘うベストテン2005」海外編第1位、「週刊文春ミステリー・ベスト10」’05年海外部門第4位にランクインされた、文庫にして上・下巻合わせて784ページにも及ぶ大作。しかも会話文が少なくて、地の文ぎっしり、ボリューム満点の小説である。
前作『飛蝗の農場』(当日記2月27日付「読書記録」に記す)に引き続き、あの大ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』を訳した越前敏弥が翻訳している。
若く才能あふれるギタリスト、サルバドールとその妻、リディアが相次いで不思議な死をとげた。リディアの大学時代の女友達3人が葬儀で7年ぶりに再会し、そのうち2人が、夫婦の母親である女主人に招待され、古城風の建物を訪れてつぎつぎと奇怪な事件に巻き込まれていくというゴシック・ホラー風の物語。
雪と自家用車の故障で館に足止めされ、館そのものとリディアの亡霊と女主人に翻弄される2人の<現在>と、4人の学生時代のエピソード、サルバドールとリディアの
恋愛物語、さらにサルバドールの少年時代---伝統と血統を重んじる母親と新しい
ものに興味を抱く彼との葛藤---が描かれる<過去>。これらがたくみに錯綜しながらストーリーが進行してゆく。
さらにそのうえ、リディアの日記や第2次大戦の従軍を回顧した手記、何の関連もないような作中小説やおとぎ話風のショートストーリー、ふざけているとしか思えない内容の大学卒業試験問題文までもが挿入される。この構成は’02年「このミス」第1位の
デビュー長編・前作『飛蝗の農場』以上に複雑で凝りに凝っている。・・・・そしてその
結末・・・・女主人が2人を足止めした真相が明かされる時、「---なんだ、これは?」というしかない。まさに全編にわたって“ドロンフィールドの奇抜な小説世界”が展開するのである。
本書は、一歩間違えればコミック・ノヴェル(バカミス)になりかねない、あえて言えば
ゴシック・ロマンスと青春小説の壮大なパロディーである。


ちなみに、本書が今年私の読んだ(上・下巻分冊を1冊と数えて)40冊目の本となった。