今日読み終えた本

震災列島

震災列島

’02年9月に、「第26回メフィスト賞」を受賞してリリースされたデビュー作『死都日本』に続いて書かれた、著者の第2作。
前作は、科学的根拠に基づいた九州の火山帯の“噴火”とその被害を国家的な規模で描いた、ハリウッドのパニック映画ばりの、圧倒的なスケールのクライシス・ノベルであった。
今回のテーマは“地震”である。東海地震、連動して発生する東南海地震、名古屋に大津波が・・、震源域の真ん中に位置する浜岡原発・・。近い将来、必ず起こるであろう巨大地震に対して政府の予知対策は・・・、被災者の救援体制は・・・、復興支援策は・・・、そして首相の大地震に際して胸に秘めるある秘策とは・・・。
本書は、以上のような国家的な描写もみられるが、『死都日本』で書かれた、ディテールにこだわった大災害発生時の詳細な描写や、そのもたらす被害、国家的な危機の
シュミレーションとかにはあまりページは割かれていない。
メインの物語は名古屋の南部、港付近に住むある家族の、暴力団との抗争である。
町に住み着いて、政治家や建設業者と癒着し、よからぬたくらみをもつ暴力団に愛する娘が襲われる。その父と祖父がこの巨大地震を利用して、前途をはかなんで自殺してしまった娘の仇を晴らすため、暴力団を壊滅させるべく、徒手空拳から準備を進める。そして予測どおり大地震が連続して発生し、ふたりは戦闘を開始する。
復讐物語として読む分には興味深い小説ではあるが、テーマを“地震”としながらも、身近な町内・家族の問題をメインにすえたため、小粒の小説になってしまった感は
否めない。『死都日本』のインパクトが強かっただけに、もう少し科学的で、壮大なスケールの、前作を上回るような“地震”クライシス・ノベルを読ませて欲しかった。