今日読み終えた本

極点飛行

極点飛行

世界を舞台にした、ハリウッド映画ばりの壮大なスケールの国際謀略冒険小説の第一人者、笹本稜平の小説。彼は『太平洋の薔薇』で’03年「第6回大薮春彦賞」も受賞している。
今回の舞台は南極。桐村彬は南極を拠点として、主に夏場(といっても気温は氷点下)の民間人顧客の航空輸送を手がけるチリの新興企業に雇われる極地パイロットだ。
彼はクリスマスイブに、ある南極基地の事故で負傷した隊員を輸送する指令を受ける。そして人道的な立場から、愛機ツインオッター(極地仕様の双発プロペラ輸送機)を駆って現場から負傷者を運ぶところから、一気に国際的な謀略事件に巻き込まれる。
危機、また危機の連続・・・。桐村たちを襲うのはチリ空軍やアルゼンチン空軍を名乗る者たちから、アメリカCIA、第三帝国再興をたくらむネオナチがらみの謎の組織。
さまざまな国家の思惑が入り乱れ、失われた権力を取り戻そうとする政治犯たちが
現れる。
ヒロインの拉致誘拐・救出から、複数の組織による監禁・脱出・銃撃戦、彼らは地球上で最も過酷な冬の嵐の中、文字通りの死闘を繰り広げる。
謀略戦の目的は旧ナチの金塊から辿られた、南極に眠る高含有率の金鉱脈だった。富への欲望と失われた権力への執着とが果てしない暴虐と騙しあいを呼び、桐村たちを巻き込んだのだ。
初出が月刊小説誌での9回にわたる連載であったことから、毎月(各章ごと)に見どころ・読みどころの山場を惜しげもなく取り入れた結果だろうが、全編にわたって息もつかせぬアクション・冒険の連続で、読者は読み始めたら目が離せない。そして単行本化された本書を通して読むことにより、複雑に入り乱れた国際謀略事件とそれに関わる各組織の全貌が明らかになるのである。
本書は、『天空への回廊』、『太平洋の薔薇』に続く、著者会心の国際謀略冒険小説である。