今日読み終えた本

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

『魔王』、『砂漠』、『終末のフール』と、このところミステリー色の薄い作品が続いた伊坂幸太郎だが、映画化され、現在上映中の『陽気なギャングが地球を回す』の続編である本書で、久しぶりに「独特の浮遊感のある、人を喰ったような」伊坂ワールドを展開している。
本書の楽しみその1:第一章で4人のメンバーがそれぞれ独立して“日常の謎”を解く。
倉知淳の『猫丸先輩』シリーズを彷彿とさせる “日常の謎” それぞれの内容と、その解明も面白いが、公務員である成瀬や、喫茶店のマスターである響野、派遣契約社員である雪子、どうもフリーターらしい久遠、それぞれの<本職>を垣間見ることができるのは興味深い。また4つの事件が全体でひとつにつながっているという仕掛けも楽しい。
本書の楽しみその2:“誘拐された社長令嬢救出”で4人が演じるドタバタ劇。
第二章から、第一章でたくみに仕掛けられた本筋の騒動に4人が一気に巻き込まれてゆき、それに引きずられるようにズンズン読み進めてしまうストーリーの面白さ。
本書の楽しみその3:前作『陽気なギャングが地球を回す』から引き継いている趣向、各章、各パラグラフの冒頭の「言葉の意味」を紹介する広辞苑のパロディ。そしてメンバー間の会話で交わされる「格言」の数々。
本書は、エンターテインメントとしては申し分ないが、惜しむらくは、4人の本職(!?)銀行ギャングの場面が1回だけで、しかもそれがストーリーのメインにはなっていないこと。私個人としては響野の演説をもっと聴きたかった。


余談だが、本書はやはり伊坂幸太郎の『終末のフール』以来、約2ヶ月ぶりに私がお金を出して購入した新刊本である。この間に読んだ17冊の本はすべて図書館で借りた本だった。