今日読み終えた本
- 作者: T.ジェファーソンパーカー,T.Jefferson Parker,七搦理美子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/10
- メディア: 単行本
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日本では’02年「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第1位、「このミステリーがすごい!」海外編第2位になっている。
保安官補であるジョーは24歳。刑務所の看守の仕事に出向している。赤ん坊の頃、実の父親に硫酸をかけられ、今も顔に醜い傷痕が残っている。施設に預けられていたが5才の時に引き取られ、養父母に愛情を持って育てられた。礼儀正しく、人呼んで‘サイレント(静かなる)・ジョー’。
6月半ばの夕方、敬愛する養父・南カリフォルニア・オレンジ郡郡政委員のウィルとともに、ある場所に物を届けた後、ひとりの少女に出会う。そして霧の立ち込めるなかで
5人の男たちに襲われる。養父はジョーの眼前で撃たれ、病院に着いた時には息絶えていた。
身を貫かれるようなショックを受けたジョーは、仇を討つべく、FBIの捜査官や保安官事務所の刑事らの助けを借りながら、真相を追う。
初めは、ある富豪の娘の誘拐に絡んだ事件だと思われていたが、やがてその背景には、現代アメリカ社会の持つ病巣とも言える、人種と貧富の差、富裕階級の傲慢さと腐敗、政治上の権力闘争による利権の奪い合いが見え隠れしてくる。そして、それらに関わるウィルの複雑な人間関係と、彼の暗い‘裏の顔’が明らかになる。
番犬のごとく養父の言うことだけを忠実に守ってきたジョーは、今や自ら考え、行動する。それがどんなに醜悪なものであろうと、真相を知ること、そして復讐することに対して、ジョーはクールなまでに迷わない。また彼は、真剣な恋愛も経験する。
本書は惹句に“感動のミステリ”という謳い文句が書かれているが、私は、淡々とした一人称の叙述で進行するストーリーのなかに、むしろハードボイルドな、“若者の成長物語”を見た気がした。