今日読み終えた本

石の猿

石の猿

ジェフリー・ディーヴァーの<リンカーン・ライム>シリーズ第4弾。
’03年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第5位、「このミステリーがすごい!」海外編第20位。
今回の敵は、インターポールから指名手配されている、蛇頭の殺し屋‘ゴースト’。
中国からの不法移民を乗せた貨物船がロングアイランド沖で爆破され沈没する。
‘ゴースト’の仕業だった。‘ゴースト’の次の狙いは、危機一髪で船から脱出した二組の家族の命だった。ライムは彼らの行方を突き止め、‘ゴースト’の魔の手から保護
しなければならない。
冷酷無比な殺し屋‘ゴースト’は、チャイナタウンのつてをたどり、手下を使って彼らに迫る。一方、ライムも、例によって、このシリーズの特長である得意の証拠物件の科学捜査を進め、一覧表が埋ってゆくにしたがって、着実に彼らの足取りを追う。
さらに‘ゴースト’を捕らえるべくそのアジトも同時に特定してゆく。
ライムが先か、‘ゴースト’が先か。ふたりの手に汗握る対決は、本書の最大の読み
どころであり、まさに圧巻のひとことにつきる。
今回は『エンプティー・チェア』事件から、舞台は再びニューヨークに戻り、おなじみの
<ライム>チームが活躍する。彼らの捜査活動に、密航者にまぎれて潜入捜査官
としてやって来た異色の中国公安局刑事が加わり、ライムと親交を深めながら
“いい味”を出しているのも興味深い。
また鑑識技術の腕をあげたアメリアが、水深30メートルに潜り、沈没船の捜索を
行い、数々の証拠物件と共に生存者を発見するくだりは、本書のハイライトのひとつといっていいだろう。
ある人物になりすましていた‘ゴースト’、そしてラストの大逆転と、ディーヴァーならではの“どんでん返し”も健在であるが、何よりも本書は、物語の随所にオリエンタルな
趣向(風水、漢方薬をはじめ、格言、行動規範、習慣、信仰、思想、歴史など・・・)が
盛り込まれ、<ライム>シリーズのなかでも異彩を放っている。