今日読み終えた本

暗闇の囚人 (ハヤカワ文庫NV)

暗闇の囚人 (ハヤカワ文庫NV)

フィリップ・マーゴリンの、『黒い薔薇』に続く長編第4作。
本書でマーゴリンは、不動の‘10割打者’の地位を確立したといわれている。
別居中の夫でオレゴン州最高裁判事ロバートを爆殺した容疑で、突然逮捕された美貌の検事補アビー。彼女の弁護に立つのは、連戦連勝の辣腕弁護士レイノルズ。そして検察側の最重要証人として出廷するのはかつてアビーに訴追され、死刑判決を受けながら、州の最高裁の判事審査により無罪となって、釈放された凶悪・卑劣な殺人犯ディームズ。アビーに圧倒的に不利な状況のなか、レイノルズは激しい法廷戦を繰り広げる。
物語の冒頭からラストにいたるまでのエピソードの数々や記述が、すべて本書の、
きわめて緻密なプロットに仕込まれた「謎」の伏線になっている。冒頭で起こるロバート判事付きの調査官ローラの殺害事件も謎のままである。
「誰が」、「何のために」という真犯人とその動機が、本書の最大の「謎」であるが、
さすが出す本すべてがヒット作という‘10割打者’の作品らしく、裏あり、仕掛けあり、謀略あり、さらにはいったん解決したかに見えた事件の“どんでん返し”ありと、情感に満ちたエンディングまで、読み始めたらやめられない“ノンストップ・サスペンス”に圧倒される。
また本書は、三人称多視点ながら、元判事付きの調査官で、現在はレイノルズの事務所の若き女性アソシエイト弁護士トレーシーの視点を中心に進行する。彼女は駆け出しアソシエイトとして多忙な業務をこなしながらも、趣味のスポーツや調査員バリーとの恋愛にも忙しい。そんな彼女が、些細なきっかけと持ち前の鋭い勘で事件の真相を看破する。彼女の活躍がこの緊迫感のある難しい作品を、さわやかなタッチのエンターテインメントにしている。