今日読み終えた本

ダークライン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ダークライン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジョー・R・ランズデールの、エドガー賞受賞作『ボトムズ』と相似形の関係にある作品。
’03年、「このミステリーがすごい!」海外編第6位、「週刊文春ミステリーベスト10」
海外部門第20位にランクインしている。
50代後半の‘私’が、1958年の夏に体験した冒険譚を回想する物語である。
当時の‘私’は13才の少年で、テキサス東部の小さな町でドライヴ・イン・シアターを経営する家族や愛犬とともに、楽しく平穏な日々を送っていた。
そんな夏休みのある日、裏庭に埋められていた古い手紙と日記を発見する。そこには、10数年前に起きた、火災とふたりの少女が不審死を遂げた事件の謎を解く鍵が隠されていた。きわめて素直な子供らしい好奇心から‘私’は、16才の姉や、シアターの74才の黒人映写技師らとともに、両親には内緒で事件について調べはじめる。
真相究明の過程を軸に、姉から教えてもらう性についての知識、友人との夜の冒険・恐怖体験、意外に聡明だった老映写技師の言動、料理の腕が抜群の黒人メイドとの心の交流など、いつも愛犬をしたがえて行動したこのひと夏のエピソードの数々は、
相当無垢だった‘私’にとって、大人への“濃い”体験となるのである。
本書はラストに至っても、ミステリーとして明確な真相は明らかにされていない。
むしろランズデールの意図は『ボトムズ』以上に文学的要素の強い、「少年小説」を描くことだったのかもしれない。