今日読み終えた本

シャロウ・グレイブズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

シャロウ・グレイブズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジェフリー・ディーヴァーの<ジョン・ぺラム>シリーズ3部作の第1作。
このシリーズは、もともと’92年からディーヴァーがウィリアム・ジェフリーズ名義で発表したペイパー・バック・ノベルである。それだけに、<リンカーン・ライム>シリーズを
はじめとするディーヴァーの他の作品群とは微妙に雰囲気が異なる。
主人公のジョン・ぺラムは、元スタントマンにして元インディペンデント系映画監督で、今は映画のロケーション・スカウト、つまり映画撮影のロケ地探しを職業としている。
北米大陸を叉に掛けるカウボーイのような流れ者のぺラムが、旅先で事件に“巻き込まれ”、やむにやまれず敵に立ち向かうというストーリー展開である。
本書の舞台はニューヨーク州北部の田舎町、クリアリー。ぺラムの相棒マーティの乗った車がライフルの弾丸によって爆発炎上し、彼が命を落とす場面からストーリーは始まる。ところが、十分な捜査をすることなく、単純な事故として片付けられてしまう。
何者かが人を殺してまで、この町での映画撮影を阻止しようとしているのだ。
怒りに燃えるペラムは、真相を究明するべく、町に潜む巨大な悪に挑む。
やがてペラムは絶体絶命の窮地へと追い込まれてゆく。
近年のディーヴァー作品のような、“ノンストップ・ジェットコースター・サスペンス”でも
なければ、あざといまでの“どんでん返し”は見られない。むしろ、主人公であるジョン・ペラムを軸にしたハードボイルドなヒーロー小説の趣がある。しかし、ミステリーとしてのひねりや意外性が盛り込まれているのはもちろんのこと、事件を通じて主人公の
成長が描かれるなど、じっくり読ませるオーソドックスなサスペンスに仕上がっている。
私は、『ボーン・コレクター』でブレイクする以前の“普通の”ディーヴァーを垣間見た
気がした。こういう小説も、何となく“安心して”読めて良かった。
ケレンのないディーヴァーも、悪くないではないか。