今日読み終えた本

ジェフリー・ディーヴァーの<ジョン・ぺラム>シリーズ3部作の第2作。’93年の作品である。
今回はミズーリ州の寂れた町マドックスが物語の舞台に選ばれている。ミズーリ川の流れるこのあたりはタイトルにあるようにブルース・ミュージックが盛んな土地でもある。
本書は、全編に渡ってそんなブルージーな雰囲気を漂わせながらも、前作『シャロウ・グレイブズ』よりも複雑なストーリー展開で、サスペンス度もアクション度もアップしている。
そもそもペラムが目撃もしていない殺人事件の目撃者とされてしまうという、典型的な“巻き込まれ”型の物語である。彼は地元警察の刑事や、連邦検察官、FBIの特別捜査官の取調べと称する追及や、殺し屋からも狙われ、何者か正体のわからない男からも脅迫される羽目になる。それらは渾然一体となって入り乱れ、いったい誰が敵なのか見方なのか分からない。
加えて、殺し屋を雇った黒幕の動機は最後まで分からないし、偶然に知り合った美女にせよ、その真の正体はまったく不明なのだ。
ストーリーは、事件の際、銃弾を受けて半身不随となった巡査とペラムとのさりげない友情のドラマや、映画撮影のスタントマンや監督との関わりを織り交ぜながら、やがて劇的に進展していく。
本書は、“息もつかせぬ疾走感” あふれる 近年のディーヴァー作品に比べると、やや落ち着いた仕上がりである。それでもツイストやひねりや驚きもあり、派手な銃撃場面や過激な殺人シーンも描かれていて、伝統的なミステリーのなかに西部劇的アクション・ヒーローの要素を加えた快作である。