今日読み終えた本
- 作者: スコット・B.スミス,Scott B. Smith,近藤純夫
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1994/02/01
- メディア: 文庫
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平凡な主人公が欲に目がくらんで単純な計画を思いつくが、小さなほころびから破綻していくというサスペンス小説で、スティーヴン・キング絶賛という破格の折り紙が
ついた。私が手にした文庫も、なんと32刷というほどの、ベスト&ロングセラーである。
オハイオの片田舎で暮らす主人公ハンクとその兄ジェイコブ、ジェイコブの友人ルーの3人組が、ある大晦日の午後、ひょんなことから墜落した飛行機を発見する。なんと
その飛行機の中には大金が・・・。その金を自分達のものにしてしまおうというルーと、それに賛同を示す兄ジェイコブ。ハンクだけはそれに反発するが、やがては、「ほとぼりが冷めるまで金は使わない、金は自分が管理する」ということを条件に犯罪に手を
出す事に。共犯関係となった3人だが、次第に歯車が狂い始めることになる・・・。
物語前半は、ルーの傍若無人さ、ジェイコブの優柔不断さが、そして物語後半は、
犯罪を塗り隠す為にさらに犯罪の上塗りをして二進も三進もいかずに孤軍奮闘する
ハンクの惨めさと、同時に垣間見える“狂気”がキーポイント。
人物ひとりひとりの心理描写がリアルで、おそろしいほど。’99年に映画化もされたが、映画ではこういう人間の内面を存分に表現できない。小説のおもしろさ、醍醐味がここにはある。
本書のメインモチーフは、「人はいかにして静かに狂いはじめるか」というもので、増殖する不安と悪夢が、やがてハンクの日常を浸食していく過程の緊張感は圧巻である。
本書は、執筆時弱冠27才だった著者スコット・スミスのデビュー作とは思えない、
新人ばなれした手だれの風格すら漂う傑作である。
ちなみに、本書が、今年私が読んだ100冊目の本となった。