今日読み終えた本

野性の正義 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

野性の正義 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

本書は、『葬儀屋の未亡人』に続く、‘10割打者’フィリップ・マーゴリンの7作目の長編である。前作から2年、満を持して放たれた疾風怒濤の物語である。
複数の犠牲者を拷問してから殺し、さらにその臓器を密売していた、悪魔のような
犯罪者。容疑者として逮捕された外科医カルドーニは弁護士フランクとその娘で新米弁護士のアマンダに弁護を依頼する。どこか狂気をはらんだカルドーニの言動に不安を感じるアマンダだった。
動かぬ証拠を前に、誰もがカルドーニの有罪を信じて疑わなかったが、公判は思わぬ展開を見せ、事件は不可解な経緯をたどって、迷宮入りとなる。しかし、それから4年、再び同じような惨劇が起こる。そしてアマンダは、恐るべき事件の渦中に巻き込まれていく・・・。
本書では、医学会、臓器売買、大量連続殺人、人体実験、暗黒街の悪漢、麻薬、法廷劇、ロマンス、父と娘の情愛と確執、外科医夫妻の互いに牙を剥きあう獣のような
復讐心・・・、など、「よくもまあこれほど」と思わせるほど、さまざまな要素が渾然一体となってストーリーが展開してゆく。
章立てが短く、スピード感あふれるめまぐるしい場面転換も、マーゴリンの真骨頂。
本書は、予測不可能な結末まで逆転の連続技が読者を襲う、戦慄のサスペンスで
ある。