今日読み終えた本

天使と罪の街(上) (講談社文庫)

天使と罪の街(上) (講談社文庫)

天使と罪の街(下) (講談社文庫)

天使と罪の街(下) (講談社文庫)

恥ずかしながら、今年、前作の『暗く聖なる夜』を読んではじめてマイクル・コナリー
という作家を知った。<ハリー・ボッシュ>シリーズなるものも知らなかった。
本書でシリーズ第10弾にもなるそうだ。
本書を読む前に、とりあえずノン・シリーズの傑作といわれる『ザ・ポエット』と『わが心臓の痛み』を読んだ。(12月18、22日付「読書記録」にそれぞれ記す)
『暗く聖なる夜』は、ロサンゼルスの古風なまでの正統派ハード・ボイルド私立探偵小説という趣が強かったが、本書は、緻密な仕掛けと壮大なスケールが融合した、“派手なサスペンス”に仕上がっている。
’06年、「このミステリーがすごい!」海外編第7位にランクインしている。
ストーリーは、『わが心臓の痛み』『夜より暗き闇』の主人公、元FBI心理分析官マッケレイブの変死について、彼の妻からボッシュが調査を依頼されるところから始まる。時を同じくして、ネヴァダ州の砂漠から多数の他殺体が見つかり、『ザ・ポエット』の主人公のひとり、左遷中のFBI捜査官レイチェルが現地に呼び出される。これはかつて世間を震撼させた連続刑事殺人犯「詩人(ザ・ポエット)」の仕業だった。
やがてボッシュとレイチェルはラスベガスで出会い、共通の敵「詩人」を追いかける。
コナリーは本書で、コナリー作品・オールスターキャストの布陣をしいて、ノン・シリーズの2つの傑作、『ザ・ポエット』と『わが心臓の痛み』に決着をつけたと思われる。
ともあれ、本書は、追うもの<善>と、追われるもの<悪>がはっきりとしており、なおかつ、二転三転する展開といい、一人称と三人称の効果的で巧みな表現方法の使い分け、巧緻なプロット、ラストの対決場面の緊迫感、意外なほろ苦い結末といい、「当代最高のハード・ボイルド」シリーズの秀作である。