今日読み終えた本

wakaba-mark2007-01-24

デス・コレクターズ (文春文庫)

デス・コレクターズ (文春文庫)

ジャック・カーリイは、デビュー作『百番目の男』(写真右上)が’05年、各種のミステリーベストテンの上位にランクインして話題を呼んだ。第二長編である本書は、サイコサスペンスと謎解きを見事に両立させており、ミステリーとしての完成度は『百番目の男』を上回っているといえよう。
主人公は、前作に続いて‘僕’ことアラバマ州モビール市警本部のカーソン・ライダーである。『百番目の男』の事件でようやく内外に認知された≪精神病理・社会病理捜査班≫の31才の若き刑事だ。
寂れたモーテルで女性の全裸死体が発見される。死体は拷問を受け、一度埋めて掘り返されてから、ろうそくと花で不気味に装飾されていた。のちに修道女と判明するこの殺人事件を、‘僕’と相棒のハリーは担当することになるのだが、30年以上前に
裁判所で射殺されたシリアル・キラーのアートが事件解決の鍵だと知る。そこでシリアル・キラー(過去の有名な連続殺人犯たち)の「記念品コレクター」を調べることになるのだが・・・。
本書における事件の動機や背景の異常性は前作以上である。なにしろ「コレクター」の姿を詳述し、その価値観を読者に理解させない限り、本書の動機は説得力を持ち得ない。それほど異常なのである。加えて本書は、第一級の“サイコサスペンス”でありながら、読者を執拗に欺いてゆくとプロットの凝りようといい、意外で衝撃的な真犯人といい、“謎解きパズラー小説”の趣も兼ね備えている。身元不明者が何人も登場するが、その正体が判明するたびに、事件の輪郭がパズルのピースがはめ込まれるように
浮かんでくる仕掛けになっている。
また本書は、多彩なキャラクターとさまざまなサブエピソードを持つ“エンターテインメント”であると同時に、カーソン刑事の‘僕’という一人称で語られる、屈折した若者の
心情が率直に表現された“青春小説”でもある。
ジャック・カーリイは本書で更なる進化を遂げたのである。