今日読み終えた本

wakaba-mark2007-02-11

皇帝の血脈〈上〉 (新潮文庫)

皇帝の血脈〈上〉 (新潮文庫)

皇帝の血脈〈下〉 (新潮文庫)

皇帝の血脈〈下〉 (新潮文庫)

スカイパーフェクTVで放送中のミステリー専門番組「ミステリチャンネル」(写真右上)が主催する「闘うベストテン2006」海外編で次点(第11位)となった作品。
アラン・フォルサムが6年ぶりに上梓した、彼の三作目にあたる、文庫にして上・下巻
あわせて1290ページにも及ぶ壮大なスケールの大長編である。
大胆不敵なアウトロー、レイモンド。だれが名付けたか‘射殺魔レイ・ソーン’。マルチ
・リンガルでハンサムな殺し屋は、すでにシカゴとサンフランシスコ、メキシコ・シティで殺人を犯していた。物語の第1部は、若き刑事、ジョン・バロンがロサンジェルスでも
名高い捜査班の一員として彼を追い詰めるところから始まる。
スリルに満ちた警察小説かと思って読み進んでゆくと、あにはからんや、第2部・第3部と、舞台をヨーロッパ全域、そしてロシアへと移し、壮大なスケールの謀略小説に
発展する。殺し屋レイモンドは、なんと滅亡したはずのロシア・ロマノフ王朝の末裔で、再びロシアを立憲君主制にするという流れに乗じて、整形手術を受け名前を変え、
皇帝に即位しようとするのである。その目的のためレイモンドは、自分の邪魔になる者や、自分の身元を探る者たちを冷酷非情に次々と殺してゆく。しかも彼はバロンの妹を妃にするつもりでいた。バロンは殺人者の手から妹を救い出さなくてはならない。そしてレイモンドに襲われるという最大の危機を脱したバロンは、エルミタージュ美術館で最後の対決をする・・・。
以上のようなあらすじだけ述べると、荒唐無稽な感じがするが、この大長編はもっと
緻密かつ複雑に入り組んでいる。フォルサムの筆力の前に読者は、本当にそんな話もアリかなと思ってしまう。そして、章立てが短く、歯切れのいい場面転換を多用した
三人称多視点で構成されているので、私は主人公バロンを追いながら、さながら
ローラーコースターに乗っているかのようにページをどんどん捲ってしまっていた。
本書は、言うなれば陰謀小説+冒険小説+警察小説+クライムノヴェルで、フィクションの面白さをとことん追求した一大巨編といえよう。