今日読み終えた本

wakaba-mark2007-02-05

10ドルだって大金だ (KAWADE MYSTERY)

10ドルだって大金だ (KAWADE MYSTERY)

’05年、再発見されたジャック・リッチーは、日本で編まれた短編集『クライム・マシン』(写真右上)が「このミステリーがすごい!」海外編で第1位となって話題を呼んだ。
本書は版元が変わっての邦訳オリジナル第2短編集である。本書も『クライム・マシン』に負けず劣らずの、クールで、ウィットとツイストに富んだ14作が収録されている。
’06年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第5位、「このミステリーがすごい!」海外編第14位にランクインしている。
いくつか印象に残った作品を挙げてみる。
金目当てで冴えない資産家の女と結婚した放蕩男が、三ヶ月経って妻殺しを計画するのだが・・・―「妻を殺さば」。
田舎町の小さな銀行で州の会計監査官のチェックを受けたら、算定額より10ドル余計にあることが分かり、雇用主と従業員は・・・―「10ドルだって大金だ」。
とあるボクシングジムに夜しか動けない怪力男が入門、快進撃を続けるが、彼の正体は・・・―「キッド・カーデュラ」。
ある女に関する報告書を実地調査せずにタイプして提出するだけでいい、と依頼された私立探偵ターンバックルは・・・―「誰も教えてくれない」。
そのほかの作品も、いずれも、一切の無駄を省いた軽妙な語り口と、日常や常識
・読者の予想から逸脱してゆく“ひねり”と“落ち”が絶妙である。
解説にあるように、「読んでいるあいだはひたすら愉しく面白く、読み終えた後には見事に何も残らない」ジャック・リッチーの作品は、エンターテインメントとしての短編ミステリーのお手本と言っていいだろう。