今日読み終えた本

wakaba-mark2007-02-25

エンジェルズ・フライト〈上〉 (扶桑社ミステリー)

エンジェルズ・フライト〈上〉 (扶桑社ミステリー)

エンジェルズ・フライト〈下〉 (扶桑社ミステリー)

エンジェルズ・フライト〈下〉 (扶桑社ミステリー)

“当代最高のハード・ボイルド”といわれる、マイクル・コナリーの<ハリー・ボッシュ
シリーズ第6弾。邦訳単行本発表時のタイトル、『堕天使は地獄へ飛ぶ』(写真右上)が、文庫では原題の『エンジェルズ・フライト』に改題された。
ボッシュは週末の午前2時にロス市警副本部長のアーヴィングからの電話で出動を
命令される。45分後、現場であるダウンタウンの短い急勾配のケーブル鉄道、「エンジェルズ・フライト」の頂上停留所に到着したボッシュは、ロス市警を総動員したかの
ごとき警察車両と警官の多さに目を見張った。
客車の中に横たわる射殺体の黒人男性は、市警の全署員から蛇蝎のごとく嫌われている辣腕の人権弁護士エライアスだった。彼がこの10年間で警官を訴えた数は百件以上。その半分以上を勝訴に持ち込んでいるエライアスは、黒人たちにとっては天使だが、警官にとっては疫病神だった。今回も少女レイプ事件の容疑者ハリスを裁判で無罪にして、逆に取り調べに当たった警官をハリスへの暴行で訴えており、注目の
法廷が二日後に開かれることになっていたのだ。
警官の誰が犯人でも不思議でないこの事件、プライベートでも妻エレノアとのしがらみを抱えながら、自らのはらわたを抉りだすような捜査を続けるボッシュの前に、次第に陰鬱な真相が浮かび上がってくる・・・。それでもなおボッシュは、救いのない結末に
向かって突き進む。最後には暴動によって炎上するロサンジェルスのなかで、新たな原罪を背負ってしまう。
それにしても、マイクル・コナリーが描くロサンジェルスは、街の濃い陰影が、一匹狼
ボッシュの孤独な魂と男の深い寂寥感によって、一層際立ってゆくようだ。
「おれにはなにもわかっていない。妻のことも、親友のことも、この街のことも。だれもがなにもかもが見知らぬもののようだ。」