今日読み終えた本

一応の推定

一応の推定

’06年度、「第13回松本清張賞」受賞作。この賞は、ここしばらく歴史小説
時代小説が受賞していたが、今回久々に現代ミステリーが栄冠を手にした。
’06年、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第5位にもランクインしている。
JR膳所(ぜぜ)駅でホームから転落、轢死した老人。彼には心臓を患う幼い孫娘が
いた。その命を救うための臓器移植には高額な費用が必要なのだという。死の三ヶ月前に加入していた傷害保険の支払いを巡り、保険会社から調査を依頼されたベテラン調査員・村越の執念の調査が始まる。果たして老人の死は事故なのか、それとも自殺なのか? 定年退職目前の調査員による文字通り足を使った執念の調査行、終盤で二転三転する緻密なプロットはまさに“清張ばり”。
本書は、60才の新人作家・広川純の、デビュー作とは思えない的確で緻密な描写が光っており、地道な保険調査を軸に波瀾に富んだ人間ドラマが、著者の年輪を感じさせる筆力で活写されている。圧倒的なリーダビリティーを持っており、全選考委員の
賞賛を集めたのも頷ける傑作である。