今日読み終えた本

四度目の氷河期

四度目の氷河期

タイトルからして、ちょっと前の就職氷河期の頃の、奮闘する女子大生の話かと思ったら、ぜんぜん違っていた。
‘ぼく’こと南山渉(みなみやまわたる)のおおむね4才から高校を卒業する18才手前までの、“自分探し”の物語である。
「ぼくは普通の子どもとは違う。」ワタルは、5才を過ぎて幼稚園に入園してから自覚
しはじめる。最初は「おとなしく座っていることができない」程度だったが、成長するに
つれて、他の子供に比べて身長が伸び、髪が茶色で、貌のほりが深くなり、足も速くなる。なにより、父親がいない。町では親子でよそ者扱いだ。そして、なんとワタル少年は、「ぼくはクロマニヨン人の子どもだ」と思い込んでしまう。そこから先は、男子だったら多かれ少なかれ誰もが経験する、小学校から高校までの成長過程の物語が、例によって快調な“萩原節”で語られる。夏休みのトム・ソーヤばりの自然体験、第2次性徴によるカラダの変化、異性への目覚め、陸上競技に打ち込む青春、母の病気、そして“自分探し”の末に訪れる“ほんとうの父親探し”。
私はそのリーダビリティーにのせられて、一気呵成に読み進んでしまった。
本書は、他の萩原作品のような「何かに奮闘する」スタイルのお話ではないし、大きな転回はないが、読んでいて何かしらエネルギーを感じた。やっぱり萩原浩らしい、
不思議と心温まる物語だった。欲を言えば、彼らしいユーモアがもっと随所に見られると良かった。