今日読み終えた本

タイムカプセル (ミステリーYA!)

タイムカプセル (ミステリーYA!)

理論社から「ミステリーYA!」という新しいシリーズの刊行が始まった。
犯人(ホシ)は・・・豪華ミステリー作家たち。
被害者(ガイシャ)は・・・12才以上の読者。
凶器は・・・面白すぎる物語。
――というコンセプトの、いわばジュブナイルである。
この記念すべきラインナップの第一作に選ばれたのが、折原一の43作目となる本書である。折原作品全読破者のファンである私としては、いかに少年向きのジュブナイルとはいえども見逃すことはできず、さっそく手に入れて読んだ。
埼玉県北東部の小さな町の、それほど大きくない中学校の三年生の有志数人が、
卒業の記念にタイムカプセルを埋めた。
物語はカプセルを埋めてから10年後に始まる。タイムカプセルを開くセレモニーの
通知がメンバーのもとに届き、彼らの周囲で不思議な事件が次々と起こる。そして
かつての中学校に集合し、カプセルを開けてみると・・・。
現在と十年前の過去とが交互に記述されるスタイル、文体を変えた謎の「招待状」、
姿を見せない不登校生徒、突然失踪した当時の学級委員長、メンバーたちにおぞましい記憶を呼び起こさせる「ホール」という言葉、そして最大の趣向である結末部分の「袋とじ」と、文章そのものや小説スタイル自体をトリックに使ってしまう“語りの魔術師”折原ワールド満載の本書は、おとなの鑑賞にもじゅうぶん堪えうる傑作である。