今日読み終えた本
- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,村松潔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09/05
- メディア: 文庫
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’06年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第6位、
「IN・POCKET 2006年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」総合第9位、
「このミステリーがすごい!」海外編第12位。
穏やかな生活に満足していた中年の男の、“自分がつくった家族”と“自分をつくった
家族” 両方の世界が、ある事件をきっかけに崩れてゆく物語である。
ある日、近所に住む8才の少女が行方不明となり、前夜、ベビーシッターをつとめた
エリックの15才の息子キースに疑いがかかる。わが子を信用したいエリックだが、
一向に打ち解けず、真実を語ろうとしない息子の姿に苛立ちをつのらせてゆく。次第にエリックは疑心暗鬼に陥る。その不信感は、息子に対してだけにとどまらず、妻に対しても、兄に対しても、父に対しても、そして今はこの世にいない母や妹に対しても。自分自身の人生のすべてが根底から揺さぶられてゆく。
「自分には何がわかり、何はわかっていないのか。しかし、恐ろしい疑惑は煙か霧みたいなものでできているらしく、それを避けることもそれに立ち向かうこともできなかった。」
物語は悲劇的な結末を迎えるのだが、ミステリーは文学たりえるか、という問いかけに答えを出せるのは、クックのこの作品を措いてほかにはないだろう。
それにしても、クックの小説は、ストーリーが深く静かに、あくまでも穏やかな筆致で
進んでゆくにもかかわらず、いつも魅せられたように引き込まれ、なぜか一気に深く、読み込んでしまう。