今日読み終えた本

眼を閉じて (文春文庫)

眼を閉じて (文春文庫)

帯のコピーに、大ファンであるジェフリー・ディーヴァーが「本書を絶賛!」とあったので、思わず衝動買いして読んでみた。
主人公のグイード弁護士が一人称で語る、イタリア発の法廷ミステリーである。
このグイードが立ち向かうのは、いわゆるストーカー事件だ。
元恋人に付きまとわれた被害者マルティーナは、セーフ・シェルター(現代の駆け込み寺)に逃げ込み、刑事裁判で損害賠償請求をするために、グイードに弁護を依頼する。ところが、困ったことにこの被告の父親は地元法曹界の有力者だった。
まともに闘って勝てる相手ではない。弁護を引き受けたグイードの苦闘が始まる。
ストーリーは、法廷場面と併行して、生きることに苦悩するグイードの日々が、友人や恋人との付き合い、そしてひとりきりになった時に音楽を聴く様子などで描かれている。
私は、そんなグイードの姿に、この物語の悲劇的な幕切れをダブらせて見ると、マイクル・コナリーが描く、ハリー・ボッシュのような、ある種ハードボイルドな孤独の影を感じた。
本書の作者カロフィーリオが意図したテーマは、『訳者あとがき』によると、「恐怖心と
その克服」だと言う。ストーカー被害者の女性の恐怖、父親からの性的暴力を受けた少女の恐怖、それぞれが自分の恐怖から逃れようとする、あるいは勇気を振り絞って立ち向かおうとするのだそうだ。
本書は、いろんな意味できわめて現代的な、新感覚の法廷サスペンスである。