今日読み終えた本

バッドラック・ムーン〈上〉 (講談社文庫)

バッドラック・ムーン〈上〉 (講談社文庫)

バッドラック・ムーン〈下〉 (講談社文庫)

バッドラック・ムーン〈下〉 (講談社文庫)

マイクル・コナリーが、<ハリー・ボッシュ・サーガ>シリーズ6作目の『エンジェルズ
・フライト』と7作目の『夜より暗き闇』をはさんで’00年に書いたノン・シリーズ作品。
本書では、刑務所を仮釈放中の元窃盗犯、キャシー・ブラックが主人公として活躍するのだが、女性主人公というのは、コナリーの作品では初めての試みである。また、訳者もいつもの古沢嘉通でなく、(今までのところ、コナリーの長編小説では唯一)本書に
限っては木村二郎が訳していることからも、シリーズ、ノン・シリーズを問わず、
他のコナリー作品とは、読んでいてずいぶん感じが違う。
キャシーは、ある目的のために昔の仲間レオに‘仕事’を紹介してもらう。彼女はラス
・ヴェガスのカジノホテルで、持ち前の度胸と水際立った手際を発揮、見事に大金を
手に入れる。しかしその金はマフィアがらみのヤバい代物だった。
かくして彼女は、上巻第2章から登場する、表向きは私立探偵、実はカジノ支配人に雇われた‘用心棒兼殺し屋’カーチの執拗な追跡を受ける。キャシーの関係する何人もの命が奪われ、ついに魔手は彼女の最愛の人物に向けられる。そしてキャシーの、命を賭けたカーチとの最後の闘いが始まる・・・。
カーチが、人の命をなんとも思わない、血も涙もない冷血漢であるだけに、読者は一層キャシーを応援するのに力がはいる。
ともあれ、今回コナリーは、ハリー・ボッシュという大きなシリーズの存在をひとまず
横に置いておいて、新境地に自由に、意欲的にチャレンジしている。