今日読み終えた本

奇術師の密室 (扶桑社ミステリー)

奇術師の密室 (扶桑社ミステリー)

「IN・POCKET 2006年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」総合第4位。’06年、「この
ミステリーがすごい!」海外編、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門共に第7位。
巨匠リチャード・マシスンが69才の時に著した、奇想天外な通俗スリラーである。
物語の語り手は、さる脱出マジックの失敗から引退を余儀なくされ、今は植物人間の一歩手前という境遇におかれている老奇術師。登場人物は、2代目を名乗っている
息子マックスと助手でもあるその後妻、マックスの使い走りである後妻の弟と、マックスのマネージャー、そして呼び出された所轄の保安官、と限られている。
彼らが、この身動きもできなければ、口もきけない、車椅子の老奇術師の眼前で、マジックルームと呼ばれる、奇術の小道具や摩訶不思議なものがあふれ返っている彼の書斎を舞台に、ケレン味たっぷりの騙し合いの奇術合戦を繰り広げる。
タイトルがまぎらわしいが、本書は密室ものの本格謎解きパズラーではない。
読者は、手を変え、品を変え展開される、どんでん返しにつぐどんでん返しのファンタスティックな、息つくひまのない殺人劇を、まるで舞台を鑑賞しているみたいに堪能して、一気に読みきってしまうこと請け合いだ。
「1980年7月17日の午後に、あの屋敷で起こったことについては、奇妙奇天烈といっておけば、まちがいない。では、話に入るとしよう。これからはじまるのは、欲と冷血、恐怖と略奪、サディズムと殺人―そしてアメリカ式の愛の物語だ。」