今日読み終えた本

wakaba-mark2007-05-16

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

映画化もされ、話題を呼んだ<ハンニバル>シリーズの原点となる作品。ずいぶん遅まきながら、今回初めて原作を読んだ。私が手にした文庫は、なんと56刷目だった。
’89年、「このミステリーがすごい!」海外編でダントツ第1位になっている。
また、「週刊文春ミステリーベスト10」の「20世紀海外部門」で堂々第1位にも輝いた。
ストーリーは―若い女性ばかりを狙った連続皮剥ぎ殺人犯の手がかりをつかむため、FBIアカデミーの訓練生クラリスが稀代の殺人鬼ハニバル・レクター博士接触
する・・・。そして、今、上院議員の娘を誘拐して、まさに血祭りにあげんとする、くだんの殺人犯と対決する―というもので、映像化によってすっかりお馴染みである。
今回原作を読んでみて、いかに原作に忠実な映像化がなされていたかを再確認した。特に本作では脇役であるはずのレクター博士が、主役やストーリーの本筋を食わんばかりに存在感たっぷりに、衝撃的に登場するあたりは圧巻である。
また、原作である本書は、トマス・ハリスの、映像とはまた別の、小説ならではの格調高い独特な筆致と、短い章立ての簡潔・鮮明な描写を場面ごとに味わうことができる。決して通俗スリラーに堕すことなく、高いレベルと次元でスリルとサスペンスを盛り上げているあたりはさすがである。
ともあれ、ジョディ・フォスター主演の映画が公開され大ヒットしたことも手伝って、それまで一部ミステリー・ファンにしか知られていなかったサイコ・スリラーというジャンルが、巷にどっと溢れることとなった。FBIのプロファイリングという独特の捜査法が一般に流布したのも、この作品がきっかけだったのではないかと思う。
この作品から、一世を風靡する“サイコ”の時代が始まったのである。