今日読み終えた本

ブラック・アイス (扶桑社ミステリー)

ブラック・アイス (扶桑社ミステリー)

マイクル・コナリーの<ハリー・ボッシュ・サーガ>シリーズ第2弾。
’94年、「このミステリーがすごい!」海外編第9位にランクインしている。
今でこそ、このシリーズは“当代最高のハードボイルド”、“現代ハードボイルドの到達点”といわれているが、当時の書評を見ると、本書については「主人公、シリーズの
在り方が、ハードボイルドを論じる評論家の間でも賛否両論に分かれた問題作」と
書かれている。
ボッシュと同じハリウッド署の、麻薬課刑事ムーアの、頭が半分以上吹き飛んだ死体が、クリスマスの日にモーテルで発見された。殺人課で当直のボッシュは現場に赴くがなぜか捜査からはずされる。状況は、遺書らしきものも見つかって汚職警官の自殺。
しかし検屍局局長代理で、ボッシュとも付き合いのあるテレサは、自殺は偽装であり、実は殺人だと見破る。興味を抱いたボッシュは、上司の命令にそむいて、孤独な捜査を始める。やがて彼は、ブラック・アイスという新しい麻薬の売買に絡む大物を追い詰めるべく、メキシコへと踏み込んでゆく・・・。
そして、ボッシュが看破した、ラストで明らかになる衝撃的で予想外の真相は、本格ミステリーといってもいいほどのもので、「このミス」第9位にふさわしいインパクトのあるものだった。
それと共に、本書は、孤高なはみ出し刑事ボッシュを個人的に描いたハードボイルドである。それは、ボッシュが長い間知らなかった自分の父親に初めて面会する回想シーンと、もうひとつ、上司の言葉に象徴される。「わたしにはまったくおまえが理解できない。なんにもならないことになぜすべてを賭ける?」