今日読み終えた本

ナイトホークス〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ナイトホークス〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ナイトホークス〈下〉 (扶桑社ミステリー)

ナイトホークス〈下〉 (扶桑社ミステリー)

本書は、マイクル・コナリーのデビュー作であると共に、のちに“当代最高のハードボイルド”、“現代ハードボイルドの到達点”といわれる<ハリー・ボッシュ・サーガ>シリーズの記念すべき第1作でもある。
また本書でコナリーは、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」・通称エドガー賞の’93年度ベスト・ファースト・ノヴェル(最優秀新人賞)を受賞している。
メインのストーリーは、ボッシュのべトナム戦争時の戦友メドーズが死体で発見されたことに端を発する銀行強盗事件を、ボッシュとFBIの特別捜査官エレノアがペアを組んで捜査する警察小説である。本書の中でボッシュは、タフで腕はいいが、どこか孤独で、常に所轄署の上司やロス市警内務監査から目をつけられる「はみ出し」刑事として描かれている。また、コナリー流ハードボイルドの特長である、二転三転する巧緻な
プロットや、哀しく意外な真相は第1作から健在だ。
しかしそこはさすがにシリーズ1作目、「ハリー・ボッシュとは」という人物造形やこれまでの生い立ち・事件が現在進行形の事件に溶け込んで、それを損なうことなく、また
冗長になることなく、うまく書き混まれている。
それらのエピソードは、具体的にはこれからこの<シリーズ>が進むにつれて、初期の数作品の中で時間をさかのぼって明らかにされてゆくようである。そういう意味でも本書は<ハリー・ボッシュ・サーガ>の原点である。