今日読み終えた本

コールド・ロード (Hayakawa novels)

コールド・ロード (Hayakawa novels)

T・ジェファーソン・パーカーは、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリ
探偵作家クラブ)賞」・通称エドガー賞のベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)を、’02年度
『サイレント・ジョー』と、’05年度『カリフォルニア・ガール』で、2度も受賞している。
パーカーはその間にふたつ作品を発表しているが、本書は’03年に発表された、そのうちの1作である。邦訳版もその年の内に刊行され、パーカー自身が序文を寄せている。
本書は、まるで大河ドラマのように3代にもわたって反目しあう家族、それに許されない愛、父親たちと息子たちの物語が、現在の殺人事件の捜査と絡む、ストレートな
フー・ダニットである。
サンディエゴ市の実力者、84歳にしてなお意気盛んなピート・ブラガが何物かに撲殺された。捜査の指揮をとるトムは、ブラガ家とは因縁浅からぬ確執があるマクマイケル家の長男だった。トムは、ピートの身のまわりの世話をしていた看護婦、新空港の建設や港の土地をめぐってピートと対立していた人々、遺産相続に絡む遺族たちなどを
調べてゆく。
また、メインのストーリーに加えて、トムと最大の容疑者と目される看護婦との恋愛、
そしてトムと離婚した妻に引き取られた息子との限られた時間内の親交といったサイド・ストーリーも情感豊かに謳いあげられている。
なんといっても本書の最大の読みどころは、過去のしがらみを乗り越えて、あくまで
公平中立に地道な捜査を続けるトムの姿ではないだろうか。
本書には、派手さはないが最後まで分からない“真犯人は誰か”という興味と、
いちだんと抑制のきいた、T・ジェファーソン・パーカーらしい渋い“人間ドラマ”がある。