今日読み終えた本

疑惑

疑惑

私が大ファンである、“叙述ミステリーの第1人者”“言葉の魔術師”折原一の44番目の単行本は、6つの短編と1つの掌編からなっている。短編の内4作品は、’00年
から’03年までに中間小説誌に掲載されたものの収録、1作品が本書のための書き下ろし、1作品が<ボーナス・トラック>、1掌編が<スペシャル・エッセイ>と称する、折原氏が今ハマっている画家、石田黙(いしだもく)にかかわるものである。
以下に、その内容を紹介してみる。
「偶然」・・・オレオレ詐欺をテーマにして、ラストにひとひねりを加えた作品。
「疑惑」・・・夜な夜なこっそり二階から外へ出てゆく「ひきこもり」の息子が、今、世間を騒がしている連続放火犯?
「危険な乗客」・・・謎の連続猟奇殺人の犯人は、「わたし」か、夜行列車でたまたま隣りに乗り合わせた女か?列車の進行にあわせて謎は深まる。
「交換殺人計画」・・・遺産を狙って父親の殺人を企てる息子。自分に容疑がかから
ないように交換殺人を計画するが、その裏にあったものは・・・。
「津村泰造の優雅な生活」・・・家をリフォームして快適な生活を送る津村老人には
人知れぬ悩みと秘密があった。
「黙の家」・・・幻の画家の家を訪ねた女のホラー・サスペンス
「石田黙への旅」・・・折原一の、石田黙をめぐる特別エッセイ
本書は、最後のエッセイを除いて、ファンにとっては、いずれもひねりのきいた“折原
ワールド”を堪能することができる秀逸な短編集である。