今日読み終えた本

少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)

少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)

少年時代〈下〉 (ヴィレッジブックス)

少年時代〈下〉 (ヴィレッジブックス)

本書は、「週刊文春ミステリーベスト10」の「20世紀オールタイムベスト海外部門」で第12位に輝いた、キングやクーンツと並ぶモダンホラーの旗手ロバート・マキャモンが「脱ホラー宣言」をして書いた不朽の名作である。
以下に本書が獲得した数々の栄冠をあげてみる。
’95年、「このミステリーがすごい!」海外編第2位。
ブラム・ストーカー賞」受賞。「世界幻想文学大賞」受賞。「日本冒険小説協会大賞
受賞。とにかく評判の高い小説なのである。
この、文庫にして上・下巻981ページにも及ぶ大長編の主人公は、12才の空想好きで夢見がちな少年コーリーである。舞台はアメリカ南部アラバマ州の田舎町。時は1964年。冒頭の、コーリーが父親と遭遇した殺人事件が物語の縦糸となり、それに、彼の変化に富んだ一年のさまざまなエピソードが横糸として絡み、ストーリーは進行してゆく。
カーニヴァルから逃げて河に潜む怪しげな怪物、不思議な力を秘めた愛用の自転車、そして魔術を使う黒人の老女など、長い人生のある一時期、少年にだけ見ることのできる出来事が、ファンタスティックな雰囲気の中で繰り広げられてゆく。それでいて、父親の失業、愛犬や親友の死という悲しい現実もあって、胸を打つのである。
また、悪ガキとの対決や異性へのおののきもちゃんと語られている。とにかく12才の少年が出遭うあらゆることがしっかりと描ききられているのだ。
私が最も感じ入ったのは、夏休みに入ってすぐ、コーリーとその友達たちに翼が生えて、空を自由に飛ぶシーンである。つい私も、本好きで空想好きだった12才の少年の頃に戻ったような感銘を受けた。
本書は、大筋では謎解きサスペンスなのだろうが、メインのストーリーとしては、どこにでもいるような少年の、ノスタルジックな成長物語の大傑作である。