今日読み終えた本

図書館員〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

図書館員〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

図書館員〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

図書館員〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

’04年に本国アメリカで発表された本書は、その年のアメリカにおけるミステリーの
最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」・通称エドガー賞のベスト・ペイパーバック・オリジナル(最優秀ペイパーバック賞)の候補作となっている。まさに原本がペイパーバックらしい、エンターテインメントに徹した通俗サスペンスである。
ストーリーはある図書館員が、現職のアメリカ大統領の再選を阻止する秘密をひょんなきっかけで見つけてしまい、国家安全保障局から追われる身になってしまう物語である。
本書の面白さは、この図書館員の逃亡劇のハラハラ・ドキドキもさることながら、著者バインハートのユーモアと皮肉と批判精神にあるともいえよう。
ひとつは、来年のアメリカ大統領選挙のおける共和党VS民主党が背景にあるが、
民主党で初の女性大統領を目指すアン・リン・マーフィーは、まさにヒラリー・クリントンである。彼女自身が一度も物語の中に登場しないのはバインハートの心憎い演出かもしれない。
もうひとつは、皮肉とユーモアに満ちた、現職大統領ブッシュ批判である。アメリカの大統領は3選がないので、実際のブッシュ大統領は本書のスコット大統領のように再選を目指すことはないとはいうものの、国際政治学や経済学や政治哲学からのブッシュ批判はたくさんあるが、通俗エンターテインメントがブッシュ批判をするとこうなるということをたくみに提示していて面白い。