今日読み終えた本

ボストン・シャドウ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 281-2))

ボストン・シャドウ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 281-2))

『ボストン、沈黙の街』で鮮烈なデビューを飾ったウィリアム・ランデイが、今年発表した2作目の長編である。
舞台は前作と同じボストンだが、本書は時代も作品の雰囲気もずいぶんデビュー作
とは異なっている。
時は1960年代前半、地元マサチューセッツ州出身のケネディ大統領暗殺事件や
市内で発生している連続女性絞殺魔事件などによる市民の不安感、都市再開発事業推進にともなう光と影、イタリア系ギャングの台頭と暗躍、警察の腐敗など、当時の
ボストンの様子がまざまざと描き出されている。
ストーリーは、この時代のボストンで、はからずも一連の事件に巻き込まれてしまったアイルランド系三兄弟の姿を中心に進行する。彼らが、上記に掲げた事件とどう絡み合って行くのか、そして次々と明らかになってゆく事実。その事実の断片をつなぎ合わせた先に見える真実とは何か・・・、ここのところが本書の最大の読みどころだろう。
本書は、ハードボイルドと言おうか、クライム・サスペンスと言おうか、とにかくミステリーの側面を持った、都市小説であり、歴史小説である。実在の事件と実際の社会状況を背景にしながらも、あくまでフィクションとしての彼らの視点と行動を通し、約半世紀前のボストンの暗い影が浮かび上がってくる仕掛けになっている。そういう点では、
本書は原題の『ザ・ストラングラー絞殺魔)』より、邦題の『ボストン・シャドウ』の方が
よほどしっくりくるし、ずっといいと私は思う。